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September 09, 2009

スペイン語に架ける恋の橋-27-

「アスタ ルエゴ!」。
あした ねえご?明日ねぇ、ごう?また明日ってことか?ただの挨拶か?ごうって何だ?お前は牛だから、せめてモウじゃないのか。
ホセはぶつぶつ呟く。すっかり参っている。焦っているためか息まで荒くなっている。
もう訳もわからず、とにかく牛柄女の腕を抱え、急ぎ足で再び歩き出した。

店に戻ると冷蔵庫を開け、1本8ユーロで客に出しているガス入りミネラルウォーターagua con gasを取り出し、ボトルに口をつけて流し込んだ。喉の奥で炭酸が勢いよくはじけ、頭を一気に冷やしてくれる。カウンターの端にかけてあったタオルを手に取り、口を拭う。大きな呼吸を2~3回したら、ようやく少し落ち着いてきたように感じた。
まずはこの牛柄女がどこの誰なのか。そして何で自分の店に来たかったのか。それを訊く必要がある。じいさんとの妙なやり取りのことは後回しでいい、ととりあえず思った。
「君はどこから来たんだ?¿De donde eres?いったい誰なんだ?¿Quien eres?」前置きもなくホセは訊いた。4人掛けのテーブルmesa席に腰掛け、店の中を珍しそうにキョロキョロ眺めていた女は、少し驚いた風に目を見開き、「けっこう狭い店なのね。」
ホセの質問には答えず、相変わらず店内の品定めをしている様子だった。
「食べ物がおいしくてすごく流行ってるって聞いてたから、てっきり広いんだと思ってた。」
「店は少し狭い位がいい。どの客がどんな具合に満足してるとか、盛り上がってるとか分かった方が接客がしやすいんだ。注文もたくさん取れるしね。」店の評判がいいということを言われたので少し気分が良かった...いや、ちょっと待て。そうじゃない。
「そんなことを訊いてるんじゃない。誰なんだいったい。何しに来た?」たぶん目が血走ってるだろう。恐い顔になってるはずだ。相手は女だが、そんなことを気にしてる余裕はなかった。いやもっと正しく言えば、得体の知れないこの牛柄女をほっといてはいけない。自分が何とかしないと、世話しないといけないんだという気が何故か初めから起きていた。全く知らない、奇妙な格好をした相手だというのに。
しかし牛柄女は相変わらず席に座ったまま、店の中を見回している。そして信じられないことをさりげなく言った。
「それで、マリアドールはどこにあるの?」

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